2019.03.29 新規事業立ち上げに必要なエッセンスとは。
先日、ご訪問させて頂いたお客様とお話をしていたら、
『(新規事業の)実績が動き出したんです・・・』
と打ち明けてくださいました。
色々聞いていく中で非常に面白い点がありましたので、可能な範囲でお話したいと思います。
皆さんの参考になると幸いです。
新規事業のリーダーであるAさん(部長)は上司となる役員がおらず、社長が直接の上司という
立場にあるため、ダイレクトな相談ができるという恵まれた環境ではありますが、新しいミッ
ションとして、新規事業の拡大化を課せられていますが、社長からのトップダウンで『やらさ
れている感』が全く無いのです。
聞くほどに気になったのが
●リーダーであるAさんのモチベーションは何なのか?
●メンバーが何故、自主的に動いているのか?
この2点です。
思わず聞いてしまいました(笑)
■リーダーを突き動かすもの
Aさんのそのモチベーションは一体何なのでしょうか?
この私の問いにAさんは答えてくれました。
『会社というより自分が面白いことをしたいんです。』
なるほど、本人がやりたいと思うことが一番のモチベーションなんですね。
ただ、自分がやりたいことというのは好き勝手な事ではなく、会社にとって必要だと信念を持
てること、自分がやることで成長が見込めることというのが前提条件だとも仰っています。
そして、自分がやりたいことなので、かなり工夫はしています・・・とも仰っていました。
例えば、
●自分たちがお客様に提案したいサービスのチラシ(提案書)は手作りでコストをかけない。
●どういうチラシだったら理解してもらえるか徹底的にメンバーと考える。
●基本は技術部署のため営業がいないから、隣の営業部の協力を仰ぐ(=社内調整)。
●頼まれる営業も従来のノルマはあるので、彼らが負担にならない方法を作る。
●やりたいことをやらせてもらうため、本来のビジネスもメンバーで協力して実績を出す。
至極当たり前のことばかりなのですが、これを進めるのは大変なことだと思います。
この工夫を形にして、結果を出すまでにやはり2年ほどかかっているようです。
■メンバーを突き動かすもの
一方、Aさんと一緒に対応している他のメンバーはどうなのでしょうか。
技術系部署ということもあり転職組みの社員が多いのだそうです。そんな彼らをどう説得した
のですか?と聞くと面白い秘話を教えてもらいました。
『SEって最終的に独立して自営になる傾向が多いんです。なので、彼らに独立を想定して自分
が経営者になった立場で考えていこうぜ!と話し合いました。』
とても現実的な視点からの発言ですよね。説得力あります(笑)
納得すると技術系の方は非常にロジカルに考え、組み立てることができるのかもしれません。
打合せを重ねるたびに、様々な意見が打合せのたびに出てきて、トライアンドエラーを繰り返
しながらも2年(正確には2年半~3年)という期間で実績を出すことができました。
そして意外なことに、彼らが充実感を得ながらしている仕事は周囲にも伝わって、他部署から
異動要望を出す社員まで出てきているんだそうです。
そして部下であるメンバーが自主的に動くようになったので、Aさんは自身が本来しなくてはい
けない『考える仕事』や『社内調整』『営業同行』といったことに時間を充てることができる
ようになったのだそうです。
では、Aさんのやったことを単純に真似をすれば成功するのでしょうか?
実はAさんは成功要因としてさらに2つの事を教えてくれました。
まず『評価制度』。
年度の初めに掲げた目標だけでなく、他部署の仕事にも協力して売上げが上がったら、手伝っ
た人にも相応の評価がつくという制度なんだそうです。
従来の縦割りの制度ではないため実績が出てくると他の人も積極的に協力してくれたり、自分
のお客様についでに提案してくれるようになったのだそうです。
やはり頑張ったことに対してはきちんと評価をする仕組みが重要なのですね。経営陣の皆さん
は一度、評価制度を見直してみる価値はありそうです。
それから、『人材育成』。
正直、自社の製品やサービス、強みについて社員がよく理解していなかったんです・・・Aさんは
仰っていました。
そこで3年前から社長にお願いして人材育成の研修を展開するようになったのだそうです。社
長も教育の必要性を感じていたので、外部から講師を招き営業だけでなく技術系の社員にも徹
底的に教育をしたのだそうです。
教育の効果は営業ノウハウ習得だけでなく、
●社内の連携がスムーズになった
●他部署を含め自社の強みを理解できるようになった
●「価格勝負」だった営業から「利益を考える」営業に変わった
という効果を生み出したそうです。売上は若干減るところもあったそうですが、実際には利益
率は上がっているとのことでした。
営業が競合他社との違いを正しく説明できるようになったので、お客様からの評価も良くなっ
たし、何より価格ではなく自社の製品やサービスを評価されて受注できるようになったのは大
きいですね・・・とAさんは仰っていました。
今回、このお話を聞いて幾つか感じたことがあります。
●今いる人材をどう活用するべきなのか。
●そのために経営陣ができることは何なのか。
●短期的な計画ではなく2~3年スパンで一度取り組んでみることが必要。
改めてそう思いました。
人が育てば実績も伴ってくるものなのですね。
事業拡大・営業強化に向けた人材育成・人材活用について、改めて考えてみませんか?
IT/クラウドプロデューサー 篠原 右子